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我が愛しのノートルダム大聖堂

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Notre-Dame de Paris(2018.11.9)

Notre-Dame de Paris(2018.11.9 筆者撮影)焼け落ちる6ヶ月前の撮影です。
この美しい姿は永遠に失われました。

2019年4月15日、パリのノートルダム大聖堂が火災に遭い、大きな損害を受けました。

私は朝、床の中で寝ぼけまなこで見たツイッターのタイムラインでこの惨事を知りました。

ツイッターには矢継ぎ早に、大聖堂が炎につつまれ、もうもうと煙を上げる動画や画像が流れてきました。

「やめて、やめて・・・バラ窓が・・・」

スマホを持つ手が小さく震えました。

ノートルダム大聖堂のステンドグラスが、火事で消失してしまう!

中世ゴシック期のステンドグラスの大傑作「バラ窓」は、1270年に完成し、約800年間この聖堂の中でその大輪の花を咲かせ、神の恩寵を色と光で表現し、何世紀ものあいだ人々を魅了し続けてきました。

ノートルダム大聖堂のバラ窓

ノートルダム大聖堂のバラ窓(2018.11.9 筆者撮影)

ステンドグラスに携わる者として、このバラ窓を見るためにパリへ行くことを決めたほど。
「死ぬまでに見に行かなければ」と思わせる存在でした。
このステンドグラスを見るまで死ねないと本気で思っていました。

2018年11月に短期留学をかねてパリを訪れた際、いの一番に駆けつけたノートルダム大聖堂。
その大好きな場所がこんなことになるなんて…

歴史が長くて価値があるということはもちろんだけど、バラ窓のガラスは当時のものと材質も強度も違うし、使っている薬剤も同じものではないので、同じガラスは作れない。当時のステンドグラスを再現することは不可能に近い。壊れてしまったら最後、もう二度と作ることができないのです。

もう会えないのですよ。

本当に悲しくて胸が締め付けられる思いでした。

去年の初冬、この肉眼で、そしてあの聖域の中で見上げたバラ窓は、本当にこの世のものとは思えないほど美しくて、「神の国はあんなにも光り輝く世界なのか」と魂が震えました。

そんな私の回想を打ち砕くかのように、尖塔が焼け落ちる動画がタイムラインに流れてきました。

「・・・あ、あぁ・・・もう・・・」

ダメかもしれない。

ステンドグラスは熱に弱い。私たちが小さな作品を作る時でさえ、半田づけは素早く行わないと、半田ごての熱でガラスにひびが入ってしまう。

あの巨大な尖塔が焼け落ちる高熱で、ステンドグラスがもつはずがない。

その瞬間

「ステンドグラスは熱で爆発しました。」

というツイートが目に入りました。

むごすぎるツイートでした。

悪魔が振りかざした大鎌が、私の身を斜めに切り裂くような激痛を感じました。

━━━ 想像してみてください。

あなたがとても大切にしている建物、思い出の詰まった場所、大好きな風景、それが業火に焼かれ崩れ落ち、自分の前から消えて行くことがどれほど辛いことかを。

胸が張り裂けそうでした。

でも私は自分を奮い立たせました。

情報は交錯している、この目でバラ窓の最期を見た訳ではない。
まだ希望は捨ててはいけない。

会社を休む訳にもいかないので、涙をこらえ身支度をし家を出ました。

通勤時、なるべくネットは見ないようにしてました。
ニュースを知り、ステンドグラスの心配をメールやSNSメッセージでくれる友人知人。
直接のコンタクトはなくても、それぞれの方法で大聖堂とステンドグラスの思いを伝えてくださる方々。
みなさんの暖かい思いやりに、ひたすら感謝するばかりでした。

会社に着いたら必死に業務をこなし、それでもふと気が緩むとバラ窓のことを思い出してしまい、涙が溢れそうになりました。

もう壊れていたら。
いや、まだ大丈夫。きっと生きてる。

涙を隠そうと目薬を指したり、トイレに立ち個室で鼻をかんだりして無事を祈るばかりでした。

仕事を終え、帰りの電車の中でもスマホは見ませんでした。
電車の中で悲しい結果を見ることになったら、おそらく泣くのをこらえる自信がなかったからです。

しかし、隣り合わせた女性二人の会話が耳に入ってきました。

「パリの教会のステンドグラス、無事だって。よかったね。」
「バラ窓?私、新婚旅行で行ったんだよ。綺麗だったよ。また見たいなー」

・・・・・・無事?・・・・・・ほんと?

一瞬呆然とする私。

はた、と気がつき、スマホを取り出し震える手でツイッターを見る。

━━━ 奇跡

生きててくれた・・・よかった・・・また会えるんだ。

安堵のため息とともに私は電車のなかでもはばからず、ポロポロと涙を流して奇跡を神に感謝しました。

聖堂内で燃え盛る炎は1000度近くまで上がり、その熱波が9時間近く続いた中、本当に本当によく耐えてくれた。どんなに熱かったか。苦しかったか。

でも、まだ安心はできない。
高熱と放水で壁や柱が脆くなっていたら・・・

マクロン大統領は「5年で再建する」と声明を出したようですが、そんな突貫工事ではなく、
調査と修復は大切に慎重に誠実に行ってほしいです。人類の為に。

帰宅後は、泣き疲れたのでご飯も食べず、お風呂に入って速攻寝てしまいました。

床につき、寝落ちする意識の片隅で思いました。
ロンドンのウェストミンスター寺院、ケルンの大聖堂、ミラノの大聖堂。
どれもこの目で見てきた、素晴らしい中世のステンドグラスを持つ大聖堂。
今こそ大聖堂を、文化財を守ることを強く意識して欲しいと思います。
パリの貴婦人はその身の痛みをもって示してくれましたので。

歩み始めたノートルダム大聖堂の再生の道ですが、いろいろな思惑と利権に左右されることなく、人類の宝として気高くおおらかな美しい姿で、再び私たちの前に現れてくれることを願っています。

***

ほんとにね、木曜日くらいまでネットもテレビも怖くて見られませんでした。
いつ「ノートルダム大聖堂の壁が崩落し、バラ窓も粉々にくだけ散りました。」
なんていうニュースが飛び込んでくるか、ビクビクしていました。

代わりにアメリのDVDを見たり、フランス語の予習復習をしたりしてました。
それでも家人が見ているテレビの音が聞こえてきて、おののいていました。

ノートルダム大聖堂で買ったお土産を眺めながら、
今後は消失前の情報をブログでアップしてゆきたいと思います。

ノートルダム大聖堂で購入した冊子(仏語、日本語)

ノートルダム大聖堂で購入した冊子(仏語、日本語)

今回で改めて諸行無常を痛感し、一期一会を大切にしたいと思います。

彼女には修復工事でしばらく会うことはできないけど、私が生きているうちに再会できるかな?

火事にも負けない高度な技術を持って大聖堂を作り上げてくれた当時のアルチザン(職人達)に感謝するとともに、清濁併せ呑むパリが一層大好きになりました🇫🇷

シャルトル、ルーアン、リヨン、ストラスブール、ランスと
ステンドグラスが美しいフランスの大聖堂も見に行かねば!!

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